今回はグランメゾン東京第6話の解説をしていきたいと思います!!
このブログでは主にフランス料理のレシピや雑学なんかを扱っているので、グランメゾン東京の料理にスポットライトを当てて解説していきます!
他のブログとは違って登場人物やストーリーについては解説していませんが、料理についてはかなり細かく扱っているので楽しんで頂けると思います!!
このブログを読んでからドラマを見返すとより楽しんでいただけると思います!
過去の話や最新話の解説、ドラマで出てきたモンブラン・アマファソンの再現レシピなどはこちらで紹介しているのでよろしければ!⬇︎
トップレストラン50
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
トップレストラン50は実在する「ベストレストラン50 」が元になっているのでしょう。
萌絵は「もしトップレストラン50 に選ばれたらウチもエルブジ、ノーマ、フランチェスカーナの仲間入り!?」と言っていましたが、この名前が出てきた3店舗は実在するお店です。
エル・ブジはスペインにあった(現在は閉店)分子料理を提供するお店、ノーマはデンマークの北欧料理、フランチェスカーナはイタリアにあるイタリアンのお店です。
この3つのお店は全て「ベストレストラン50 」で一位に選出された経験があるお店なのです。
ちなみにエル・ブジの分子料理(分子ガストロノミー)とは、簡単に言うと料理に科学的アプローチを加えたもので、人工イクラのような技術で中にソースを閉じ込めたり、エスプーマを使ったりする調理法が特徴的な分野です。
gakuのメニュー
ラムのスモーク
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
ストーリー序盤でgakuのスーシェフ(副シェフ)として加入した祥平が改良したラム(羊肉)の料理です。
フランス語ではラム肉は「アニョー(agneau)」といいます。この料理で使われるあばら肉は「キャレ」というので、羊のあばら肉は「キャレ・ダニョー(Carré d’agneau)」と呼びます。フランス料理のお店なら厨房ではアニョーと呼ぶことがほとんどですが、ドラマでラムと呼んでいるのは視聴者に分かりやすいようにでしょうね。
この料理の手順としては
昆布締め→炭火焼→藁でスモーク、という流れでした。
羊肉で昆布締めは珍しいですが、お肉に昆布を巻くことで、昆布がお肉の水分を吸収してお肉の旨味が凝縮して引き締まり、さらに昆布の香りと旨味をつける(特にグルタミン酸という旨味成分)ことができるのです。
次に炭火焼きをしますが、第3話のジビエの解説のところでチラッと触れたように、炭焼きにすることで炭焼きの香りをつけると同時に羊肉独特の臭みを取ることができます。
また、藁でスモークするのも臭みをとって藁の香りを重ねて複雑さをプラスすることが目的だと思われます。
スジアラのポシェ
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
柿谷が作った魚料理の試作品です。
柿谷曰く、「かぼちゃのブロスでスジアラをポシェした」料理です。
スジアラは魚の種類で、かぼちゃの種のブロスとは、かぼちゃの種を煮出した薄めの出汁のようなものでしょう。
ポシェとは沸騰しない程度に温めた液体に食材を入れて火を通す調理法で、すっごく簡単に言うと「茹で」のようなものです。
和のエッセンスとして麦麹を入れていたようですが、「どこの国でも食べられる料理だ」という理由で丹後シェフに却下されていましたね。
あんこうのパピヨット
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
これは祥平が作った試作品です。
パピヨットとは、食材を紙で包んで蒸し焼きのような状態にした料理で、多くの場合紙に包まれたままお皿に乗せて提供されます。
これにはお客さんのテーブルで紙を外すことで、その瞬間にふわっと湯気が立ち昇りその香りを楽しむという演出も含まれています。
祥平はイチジクの葉で包むことによってあんこうに葉の香りをつけるだけでなく、立ち上る湯気からも葉の香りを楽しむことができるようにした演出なのでしょう。
あんこうとあん肝のポシェ
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
gakuの魚料理の完成形ですね。
骨付きのあんこうをたっぷりのバター、レモンタイムや昆布などと一緒に焼き上げた料理でした。
バターで焼くときに使った昆布やタイムは取り除いて盛り付けられますが、一緒に焼くことであんこう自体に香りがつきます。
あん肝はポシェにし、皿には味噌のソースを塗って骨付きのあんこうを盛り付け、丸く型抜きした昆布のスライスを載せています。
昆布にはゼラチン質が多く含まれているので、つなぎなどを使わなくてもこのようにぴったりとくっ付くのです。
鰆のロースト
グランメゾン東京側の魚料理は鰆のローストでしたね。
ローストとはオーブンで火を入れる調理法で、この料理の手順としては
塩でマリネして冷蔵庫で熟成→フライパンで皮をパリッと焼き上げる→オーブンでレアめに火を入れる
というのが大体の流れでした。
熟成
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
まず塩とアネット(ディルというハーブ)でマリネしていました。
このときに水分量の多いものには塩を多めにと尾花が言っていました。この場合塩でマリネするのは塩味をつける目的もありますが、鰆の余分な水分を抜いて旨味を凝縮させることを目的としていると思われます。
塩には脱水作用があり、塩を振りかけると浸透圧で食材から水分が抜けます。サラダにドレッシングをかけると野菜から水分がでてお皿に水が溜まるのは皆さん見たことがあると思いますが、それと同じ原理です。
また、マリネした後は塩抜きをするので強く塩を振っても塩辛くなりすぎる心配はありません(ドラマでも塩抜きをしている描写はありましたし)。
また、冷蔵庫でマリネしているときにラップをかけていませんでしたが、冷蔵庫の中は結構乾燥しやすいのです。
しかしあえてラップをせずに寝かせることで、わずかに鰆を乾燥させて水分を抜き、旨味を凝縮させようとしているのだと思われます。
マリネと冷蔵庫での熟成で水分を抜いて旨味を凝縮させているのですね。
また、普通マリネ後の塩抜きは流水にしばらく浸けておくのですが、そうするとせっかく鰆から水分を抜いたのに、水を再び吸ってしまうので、このときの塩抜きはサッと身を洗う程度にしていました。
ロースト
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
塩抜きした鰆はまず皮目をフライパンで焼きます。
焼いていくと身が反ってくる場合があるので1枚目の写真のようにヘラでそっと押さえつけて皮がフライパンにきちんと触れるようにすることで、皮目をパリッと焼き上げます。その後はひっくり返して身側も軽く焼き、オーブンで火を入れます。
オーブンから出したときに尾花が指で鰆を押して焼き加減を確かめていました。
これは料理人がよくやる確かめ方で、肉や魚は火が通るほど指で押したときに硬い感触になります。
どれくらいの柔らかさならどの程度火が入っているのかは、長い経験があるからこそわかることなのです。
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
完成形の断面です。
ドラマでは「皮はパリッと、中心は刺身のような食感と形容されています。
このように外側には火が通っていて中心はほぼ生のような状態にするには、高温のオーブンで短時間で火を入れるという方法を取ります。
逆に低温のオーブンで長時間火を入れると全体的にじんわりと火が通り、全体が満遍なく適度に火が入った状態になります。
それはそれでとても美味しいのですが、尾花たちの目的とする、断面にグラデーションのついた状態ではないのでしょう。
試作ボードとノート
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
芹田のつけていたノートを見てみると、左からフライパン、オーブン、ルポゼ、回数、塩と欄がつけられています。
例えばフライパン30秒、オーブン1分、ルポゼ3分、回数2回、塩0.5gと書いてあった場合は、
0.5gの塩でマリネし、30秒フライパンで焼き、「オーブンで1分加熱して3分休ませて余熱で火を入れる(ルポゼ)」を2回繰り返す
というやり方になります。
回数はオーブン→ルポゼを繰り返す回数を表しています。ちなみにオーブンは300℃とも書いてあります。
壁のボードにもほぼ同じことが書かれています。また、その日の気温と湿度によって場合分けもされています。
そこまで細かく場合分けするのは再現性を高めてどんな状態でも同じクオリティの料理を提供できるようにするためでしょう。
水晶文旦のソース
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
文旦は柑橘系の果物、フヌイユは野菜の名前で日本でいう「ういきょう」です。
グリーンペッパーは香りの強い胡椒で、ブラックペッパーのように乾燥してあるものの他に水煮で売られている場合もあります。ちなみにブラックペッパー、ホワイトペッパー、グリーンペッパーは元は全て同じもので、収穫時期や加工法による違いで名前や香り、味わいが異なります。
また、材料にトランペットと書いてありますが、これはトランペット茸のことでキノコの一種です。
この文旦ソースはおそらく冷製のソースかと思われます。キノコ類だけ火を通してからみじん切りにした他の食材と混ぜ合わせて作っているのだと思われます。
このように食材をみじん切りにして作る冷製のソースには「ラヴィゴットソース」というものがあるのでもしかしたらこのラヴィゴットソースのアレンジなのかもしれません。
その他
サラマンダー
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
芹田が最後に作るまかないのシーンで、鰆のアラを焼いているこの器具はサラマンダーと呼ばれ、上の赤く光っている部分が熱くなっていて、その熱で食材に火を通します。
魚のアラは厚みがないため、オーブンで焼くとすぐに火が通ってしまって硬くなりやすいので、サラマンダーで時間をかけて焼いているようです。芹田も学んでいるんですね!
このサラマンダーは過去にも雲丹のグラティネやアッシ・パルマンティエでも使われていて、4話と5話の解説でも紹介しました。
ライト
引用:グランメゾン東京 第6話 2019年11月24日放送分 #GYAOスクリーンショット
芹田がグランメゾン東京で食事をした後帰ろうとするシーンで、尾花がライトを上に押し上げているシーンがあります。
このライトは電力?が強く、このライトが当たっている場所は暖かくなるため、盛り付けた後に配膳を待つ料理にはこのライトをピンポイントで当てて保温します。
オーブンのクセ
鰆のローストの試作シーンで、尾花が「このオーブンはクセがあるから…」と言っているシーンがあります。
厨房のオーブン、特にガスオーブンにはクセがあることが少なくなく、左右で温度が違ったり、手前より奥の方が温度が高いなど温度のムラがあることが多々あります。
そのムラの具合もオーブンによって異ります。なので料理人は自分の店のオーブンのクセを知って、それに合わせて火入れ具合を調節していくのです。
なので経験を積んだ料理人でもいきなり違う店で料理をすることになると、オーブンのクセが掴みきれずに多少のやりにくさを感じることもあるのです。
同じレシピでも味が変わること
今回の話でキーとなったのが、「同じレシピでも料理人によって味が変わる」という言葉でした。
さすがにレシピが同じなら同じ味になるだろ…、ドラマだから大袈裟に言っているだけだろ…と思われるかもしれませんが、実は本当に作り手によって味は変わってきます。
料理人によって塩ひとつまみの量は違いますし、同じレシピでも肉や魚の焼き加減やソースの煮詰め具合は変わってきます。
今回の鰆のローストの例で言うと、フライパンで焼く時の微妙な火加減の違いや、引く油の量、皮目を焼くときにヘラで押しつけるときの微妙な力加減など、これらの小さな違いが積み重なった結果として料理に違いが生まれます。
また上記で述べたオーブンのクセの違いもありますし、厨房の気温が違ければ休ませているとき(ルポゼ)の余熱の入り方も変わってしまいます。
さらに言うとgakuはグランメゾン東京よりも高価な鰆を使っていましたが使う鰆が違ければ、鰆の脂のノリ方や水分量、厚みも違いますよね。
ましてや脂のノリが良い鰆を使うならローストよりも適した調理法がある可能性もあります。
これらの小さな違いが積み重なっていった結果、グランメゾン東京では上手くいったやり方でもgakuでは「ただの焼き魚になっとるやないかい!」になってしまったんですね。
今回の第6話の解説は以上となります。
また次回以降も更新していくので、ぜひ読んでください!
過去の話(1話、2話は書いてないので3話以降の)解説や最新話の解説、ドラマで出てきたモンブラン・アマファソンの再現レシピなどはこちらからご覧ください!⬇︎