今回の記事はフレンチではかなりポピュラーながら日本では意外とあまり食べる機会は少ない「鴨」についての記事です!
日本のスーパーなどでは、ニワトリの肉はあっても鴨肉はなかなか見かけないと思います。ちょっと高級なスーパーや、肉のハナマサなどにはあるのですが、鴨肉を置いてるスーパーはあまりないですね…
鴨肉はフランス語で「Canard」と書き、「カナール」と読みます。「キャナー」、「キャナール」と読む場合もあります。
幼い鴨のことを「canette」と書き、「カネット」と読みます。
日本でも鴨南蛮、鴨鍋などありますが、フランスでも鴨は一般的な食材とされています。
鴨肉の種類
合鴨
アヒルと真鴨の交配種のことを指します。日本国内で流通しているのはほとんどが合鴨です。
脂が多く、身は柔らかくクセが少ないですが、他の真鴨やマグレ鴨に比べると鴨としての味は薄いようです(マグレ鴨も厳密には合鴨ですが…)。
真鴨
真鴨は野生なのでジビエに分類されます。
飼育されてる合鴨よりも野生なので運動量が多いため、身が引き締まっていて、野性味が若干あるのが特徴です。
真鴨のメスは全身が茶色ですが、オスは顔がとても綺麗な緑色をしているため、「青首鴨」と呼ばれ、フランス語では「コルベール」の名で高い人気を誇っています。
真鴨はスーパーで売っていることはないので、精肉業者で仕入れるかジビエを取り扱っているオンラインショップで購入するかなので、一般の方には手に入れづらいでしょう。
マグレ鴨
マグレ鴨はフォワグラを作るために育てた合鴨の胸肉のことを指します。いわゆるフォワグラを作る過程で出た副産品ですね。
物によってはフォワグラの香りがするものもあるようで、肉質は少し固めですが味はとてもよく、比較的高級品として扱われています。
シャラン鴨
これも合鴨ですが、ブランド品種のようなもので、最高級品です。
シャラン鴨はフランスの「ビュルゴー家」という名家で厳格な規定の元育てられ、屠殺されたもののみを指します。
このビュルゴー家では「エトゥフェ」という屠殺法で処理された鴨のことで、鴨の首の後ろに針を刺し、仮死状態にして血抜きをせずに処理する方法です。
血抜きをせずに処理することで、全身がうっ血し、血が全身に行き渡ることで濃厚な味わいが出るそうです。シャラン鴨はこの方法で処理され、エトゥフェはビュルゴー家にのみ許されている手法なので生産数も多くなくとても高級なものとされています。
ちなみにシャラン産鴨というものもありますが、これはフランスのシャランという地域で生産された鴨というだけで、ビュルゴー家のシャラン鴨とはまったくの別物です(間違えないようにお気をつけください笑)。
調理法
ロースト(ロティ)
ローストはオーブンで火入れすることを指す調理法です。フランス語ではロティと呼ばれます。
胸肉としてカットされたものを焼く方法と骨付き(コッフル)のまま焼く方法があります。骨付きの状態で焼くと身が骨にくっついているため加熱しても身が縮まらず、間接的に火が入るためしっとりと仕上がります。
ロース肉としてカットされているものを焼く方法は、身を骨から外す時間も技術も必要ないため調理が素早く出来、レストランでも骨付きでないものを焼く方が一般的です。
合鴨のロティの焼き方はこちらで紹介しています。↓
鴨肉のロティを使ったメニューはこちら!↓
パイ包み
パイ包として、ミンチにした鴨の肉をパイ生地で包んで焼くものも定番です。
鴨のパイ包みの中にフォワグラを入れて焼くものもよくあります。
多くの場合、鴨肉だけでなく、豚や鶏肉のミンチと一緒に混ぜて使われます。
また、モモ肉をコンフィしたものをパイで包むこともあります。
コンフィ
胸肉はロティで、モモ肉はコンフィとして調理されることが多い傾向があります。
モモ肉は強火で火を通すと固くなってしまうため、コンフィでじっくり火を通すことでホロホロとした食感になります。
コンフィにした後にフライパンで焼き色をつけることが多いです。
その他
また、ガラからもいいダシが出るため、ガラはフォンやジュ(フレンチで使われる出汁のようなもの)をとるのに使われます。
フォン・ド・カナール、ジュ・ド・カナールと呼ばれます。
ハツやレバーはブロシェット(串焼き)やソテーとして調理されます。また、鴨肉をミンチにしてソーセージにしたりもできます。
鴨肉も牛肉等と同じく、中がレアでも食べられます。
むしろ中まで白っぽくなるまで火が通っているとパサパサしてしまい、身が固くなってしまうためフレンチでは火が通り過ぎとみなされてしまいます。
鴨肉をローストする場合は中心温度が55〜56℃になるように焼くと中がきれいなロゼ色に仕上がります。
ソース
鴨肉に合わせるソースは、甘みのある果実ベースのソースがよく合わせられる傾向があります。
また、本格的なお店だと、鴨のガラや内臓を使った濃厚でクラシックなソースを使うことも少なくありません。
ソース・バニュルス
「バニュルス」とは、南仏のスペイン国境付近、バニュルス=シュル=メールで作られる甘口のワインのことです。
このバニュルスとジュドカナールを合わせて作るソースです。
ビガラードソース
グラニュー糖を熱してキャラメル状にし、ビネガーで色止め、そこにオレンジの果汁とフォンドボー、オレンジピールなどを加えて作るソースです。
オレンジの爽やかな酸味にキャラメルの苦味が加わって、深みのある味わいです。
ビガラードソースの作り方はこちら↓
カシスソース
カシスピューレ、またはクレーム・ド・カシスを使ったソースです。
クレーム・ド・カシスとは、カシスのリキュールのことで、居酒屋などでカシオレを作るときに使うあのお酒です。
甘いソースが苦手だなーって方は、クレームドカシスだけでなく赤ワインも合わせて使うことで甘くなりすぎになることを防げるのでおすすめです。カシスの甘酸っぱい味が鴨肉によく合いますよ!⬇︎
ソース・ルーアネーズ
鴨のガラと赤ワインで作ったソースの素を鴨のレバーや血でつないだソースです。
骨をプレス機(プレス・ア・カナール)にかけて抽出したエキスを加える場合もあります。本来はルーアン種の野鴨のガラやレバーを使って作るソースを指します。
↑プレス・ア・カナール
引用元 : ホテルアナガ
サルミソース
これも赤ワインベースに鴨のレバーや血を使ってつないだソースです。
レバーの代わりにフォワグラを使うこともあります。
フォワグラを使うとコッテリとリッチな味わいになります。
ポワヴラードソース
スパイスの効いた、ジュドカナールなどで作ったソースです。フランス語で胡椒を意味する「ポワヴル」からきた名前です。
鹿肉に合わせることの多いソースですが、ジビエのフォンを使ったクラシックなソースで、野性味のある真鴨にもよく合います。
その他
ビーツとも相性がよく、ビーツのソースやビネグレット、スライスしたものと鴨肉を合わせて提供されることも多々あります。
またカシスソースなどの甘いソースに合わせることも多いので、同じく甘味のあるはちみつもよく鴨肉と合わせられます。
ソースにはちみつを入れたり、鴨肉の皮目にはちみつを塗って甘みとツヤを出したりもします。
ちなみに鴨料理と言えばトゥールダルジャン!
トゥールダルジャンとは、パリにある鴨料理が有名な歴史ある高級レストランです。
現在はミシュランの星は一ツ星ですが、とても長い間三ツ星をもっていた超一流店です。
このトゥールダルジャンでは、鴨肉に、上記の血入りソースを合わせて提供していますが、このほかに「マルコポーロソース」という5種類のコショウで作ったソースも提供しています。
最後に
この記事で書いたソースや調理法は、後々そのレシピ等を投稿していきたいと思ってます。
その際はこの記事にリンクを貼って見やすくしていきたいと思っています。
また、一番最初にも書きましたが、鴨肉はスーパーではなかなか手に入らないです。
売っていてもふつうの「合鴨」しか売っていない場合が多いため、「マグレ鴨」や「シャラン鴨」が欲しい方はネットショッピングで購入することをお勧めします!
一応この記事に貼ったリンクからご購入することも出来ますので、よろしければ。
それではお読みいただきありがとうございました!